東京・明治神宮外苑地区(新宿区、港区)の再開発で、高さ3メートル以上の樹木の伐採が28日始まった。神宮球場や高層ビルの整備が今後本格化する。伐採は619本に上り、現場周辺では自然環境の悪化を懸念する住民らが「伐採反対」と声を張り続けた。
明治神宮外苑地区の再開発に向けて始まった樹木の伐採作業=東京都新宿区で
午後1時ごろ、神宮第二球場の解体工事現場で、ケヤキの幹や枝を作業員がチェーンソーで切断し、クレーン車で次々と運んだ。事業者代表の三井不動産によると、28日はケヤキとイヌツゲの計2本を伐採し、オガタマ1本を地区内に移植した。当面は同球場跡地で2026年初頭に着工する新ラグビー場建設に合わせ、71本の樹木を伐採、93本を移植する。
明治神宮外苑の再開発に向けて、大型クレーンなどを使って始まった樹木の伐採作業=28日、東京都新宿区で、本社ヘリ「あさづる」から
大量伐採は、2022年に日本イコモス国内委員会の石川幹子理事が調査で明らかにして以降、専門家や周辺住民、昨年亡くなった作曲家の坂本龍一さんら著名人が相次いで計画の見直しや撤回を求めた。
東京都は2023年2月に事業を認可し、批判を受けて同年9月、樹木の保全を事業者に要請。計画は事実上止まっていた。事業者側は今月21日、伐採本数を124本減らす見直し案を都環境影響評価審議会に報告し、都側も受け入れた。
明治神宮外苑地区の再開発に向けて始まった樹木の伐採作業=28日、東京都新宿区で
計画区域は28.4ヘクタールで神宮球場と秩父宮ラグビー場の位置を入れ替えて整備し、高層ビル3棟を新設する。全体の完成は当初36年を見込んでいたが、計画見直しで精査中。樹木は全体で619本を伐採するほか964本を保存、242本を移植し、1098本を新たに植える。聖徳記念絵画館に続く4列のイチョウ並木は保存する。
三井不動産ビルディング事業2部の河島航平グループ長は根強い批判に「開発の意義や今後の良くなっていく姿を示して、共感を得ていきたい」と話した。(原田遼)
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樹木が伐採された明治神宮第二球場の解体工事現場には、反対する住民ら約40人が集まり、高い囲いの向こうから作業の音が響く中「強行反対」と叫んだ。
問題提起を続けてきた日本イコモス国内委員会の石川幹子理事も駆けつけ「イコモスとして質問状を送り続けているが、2年以上無視されている。切る前に説明を聞く権利がある」と繰り返し求めた。敷地の出入り口で一時押し問答になり、現場の担当者はこの日も対応を拒否。出入り口は警備員で固められた。
伐採後には「全く民主的ではない。緑の専門家として仕事をしてきて、100年の木が切られるのに黙っていられない」と憤った。
文化人ら有志も約80人の連名で反対の要望書をとりまとめた。音楽家の後藤正文氏は「100年前の東京を生きた人々からの贈り物である緑豊かな庭園を、100年先の東京を生きる人々に手渡すのが、私たちの役割だ」とコメントした。
当初の伐採予定だった昨秋の段階では、文化人から批判的な意見が目立つなど反対運動は盛り上がっていたが、小池百合子知事の要請で事業がストップしている間に沈静化した。反対する住民の1人は「緑を犠牲にして開発する構図は変わっていないのに、1年の間が空いたことで、反対の空気はしぼんだ」と悔しがった。(森本智之)
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