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前衛芸術をめぐる命がけの抗争 「中央アジアの手仕事」展 〈美術評〉椹木野衣

2026-06-01 HaiPress

ふだんから現代美術寄りというか、先端っぽい(苦笑)アートを取り上げることが多いわたしが、今回は中央アジアの手仕事を取り上げたのにはわけがある。

《刺繡布(スザニ)》19世紀後半広島県立美術館蔵

本展では中央アジアに住む民族のうち、具体的にはウズベクの女性たちの手による刺繡布と、トルクメンで魔除けなどのために装身された銀製のジュエリーを展示しているのだが、わたしが特に心惹かれたのは、前者の彩り豊かで抽象的、しかし手仕事のあとがそのまま残された文様の世界である。

他方、中央アジアはかつてソ連に属する一帯でもあった。ソ連は革命によって生まれた社会主義国家であったから、民族的なもの、伝統的なもの、宗教的なものを否定し、科学と生産性を優先した。当然、これらの刺繡やジュエリーも等閑(とうかん)視されるようになった。

だが、ロシア革命によって芸術の世界で生まれたロシア・アヴァンギャルドは、一方でブルジョア的な具象の美術を断罪し、抽象の世界を重視した。

だから、中央アジアの装飾群が持つ伝統的な抽象性とアヴァンギャルドは、水と油のようで実は相性がよく、とりわけウズベクのあたりでは「ウズベク・アヴァンギャルド」と呼ばれる特異な前衛美術が生まれた。

そして、スターリンがレーニンを継ぎアヴァンギャルドを否定した以降も、モスクワからの物理的な距離ゆえ辺境(いまのような通信技術は皆無だ)に留まったウズベクでは、1930年代初頭まで(最終的には粛清される)アヴァンギャルド芸術が残り続け、一時は最大の精華とも受けとれる時期があったのだ。

やや(だいぶ?)変化球か...

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